下肢のむくみ関連疾患外来の開設
今まで当クリニックでは下肢のむくみ外来をとおして、数多くの患者様に下肢静脈瘤の治療や弾性ストッキングのご指導をしてまいりました。しかし、手術だけでは治すことができない場合があるのにもかかわらず、そのまま放置されている患者様が増えています。特にコロナ禍では医療機関へ行くことが難しくなり、かなり悪化してからいらっしゃいます。
当クリニックでは単なるむくみ外来からもう少し範囲をひろげた「下肢の浮腫み関連疾患外来」を開設しました。
今、あなたはこんな状態でお困りではありませんか?
お悩み①
下肢静脈瘤の手術を受けたにもかかわらずむくみがなくならず、医療機関に相談しても有効な手段もないまま放置されていませんか?
または、下肢静脈エコーで異常がないため原因が不明とされて、ただ弾性ストッキングをはかされていませんか?そして、いくら頑張ってはいていても夕方になると痛くなってしまい、結局脱いでしまう方はいませんか?
これはもはや下肢静脈瘤の問題ではなく、生活習慣か内臓の病気の可能性があります。そのため、的確な診断と治療がなければ治りません
お悩み②
くるぶしや足の甲の皮膚に穴があいて水が出てきて困っている方はいませんか?
そして、医療機関に長年かかって治療を受けていてもその状態が治らず、そのままあきらめている方はいませんか?
これはうっ滞性皮膚潰瘍といいますが、一般的には効果があると言われている下肢静脈の血管内焼灼術でさえ治らないことがあります。このような場合は形成外科で皮膚移植となりますが、それでも治らない患者様がいらっしゃいます。
このような場合は皮膚の血流を改善するため、潰瘍を作っている隠れた病気も同時に治療しなければ治りません。この原因は皮膚の微小血流を担う毛細血管がマイクロ血栓などで閉塞することにより皮膚の壊死を起こしたり、治癒を担う新しい細胞の増殖を止めてしまっていることが考えられます。すなわち、皮膚の微小循環を改善しない限り潰瘍は治りません。
お悩み③
皮膚に網目のようなしみがでてきているにも関わらず、下肢静脈エコーをしても異常がないため、取り合ってもらえない方はいませんか?
これは網目静脈瘤ではなく、リベド血管症なのです。これも皮膚の微小循環を担う毛細血管が炎症を起こしてできた色素沈着であることがあり、ストーブや暖炉などを下肢をさらしたり、自己免疫疾患やアレルギーがあるとそのひとつの症状として起こる皮膚血管炎が考えられます。この場合、通常の色素沈着の治療や下肢静脈瘤の治療をしても治りません。
蜂窩織炎とは?
むくみが長期化して突然赤く熱をもったり、腫れ上がったったりしたことはありませんか?
その症状は、蜂窩織炎(ほうかしきえん)と呼ばれるものかもしれません。
蜂窩織炎とは?
皮膚とそのすぐ下の脂肪組織に生じる、広がりやすい細菌感染症のことです。別名、蜂巣炎(ほうそうえん)とも呼ばれます。
患部の皮膚に赤み、腫れ、熱感、痛みが出現し、急速に広がっていきます。場合によっては、発熱、悪寒、倦怠感など全身性の症状を伴うことも多くあります。足のすねの部分や甲によく発生しますが、他の部位に起こることもあります。通常は同時に複数の部位に発症することはありません。
・原因
人間の皮膚は細菌や異物が簡単に入り込まないように守られていますが、ひっかき傷や切り傷、虫刺されや手術後など、皮膚に傷がついてる部分から侵入した細菌が皮下組織にまで到達すると、蜂窩織炎を引き起こします。また、そういった傷がなくても糖尿病やステロイド治療など、免疫を低下させる要因があると蜂窩織炎が重篤化しやすくなります。
また、むくんでいる部位の組織間液(細胞と細胞の間にたまった水分)はタンパク質や脂肪、壊れた細胞・細菌などの老廃物を多く含んでおり細菌が増殖しやすい環境であるため、リンパ浮腫などで下肢がむくむ人は蜂窩織炎になりやすくなります。
・治療
蜂窩織炎は、細菌感染によって起こる症状であるため、抗菌薬での治療になります。通常、1週間ほどで症状は改善していきます。炎症反応が残っていたり、発熱が継続している場合は、内服から点滴へ変更して治療が必要になります。痛みや発熱などがある場合は適宜症状緩和のための処方もされます。
抗菌薬での治療に加えて、患部の安静と挙上、クーリングを行うことで、症状緩和や早期回復が期待できます。
また、患部に膿瘍ができている場合には排膿処置を実施することになります。
・予防法
前述のとおり、蜂窩織炎は皮膚の下に細菌が入ることで生じるので、皮膚の清潔、バリア機能を保ち細菌が体内へ侵入するのを防ぐことが大事になります。手洗いうがい等の基本的な対策はもちろん、傷ができた場合には、傷口をよく泡立てた石鹸等できちんと洗浄すること、入浴後や水仕事をした後には保湿をすることなどが大切です。
うっ滞性脂肪織炎とは?
蜂窩織炎と似た症状にうっ滞性脂肪織炎(うったいせいしぼうしきえん)があります。
〇うっ滞性脂肪織炎とは?
皮膚の下にある脂肪組織の深いところから発生する、圧痛を伴う皮膚の赤い膨らみ(結節)が特徴です。蜂窩織炎と違い細菌によって起こるものではなく、静脈還流障害(血液がきちんと心臓へ戻らず滞ってしまってしまう状態)によって起こります。
・原因
通常血液は心臓方向に向かって流れていますが、長時間の立ち仕事やデスクワーク、運動不足や病気など何らかの原因で血液の流れが滞ることによって、血液中に水分が大量に溜まります。すると血管内の圧力が高くなっていき、血液中の水分(組織間液)が血管外へ押し出されてきます。そして、いったん押し出されたこの水分(組織間液)は、静脈内になかなか再吸収されていきません。水分が再吸収されない時間が長期間続くと、柔らかい皮膚が破綻し、押しても弾力性を感じにくい硬い皮膚ができます。その硬い皮膚と血管外へ押し出された水分の間にある脂肪組織が、挟まれる圧力に耐えきれなくなり、炎症を起こすことで、疼痛や赤みといった症状が出現します。
当院にも、「なかなかむくみが治らないと思ったら、痛みや赤みが強くなってきた」と受診される方が多くいらっしゃいます。
・治療法、予防法
血管内に余分に水分がたまっている状態を改善するため、弾性ストッキングや弾性包帯で外から圧迫すること、立ち仕事の最中も下肢の運動をするなどの生活の改善、体重を減らすことなどが必要になります。また、余剰水分が多い患者様には、利尿剤や漢方薬で水分コントロールを実施していくことになります。
静脈還流障害を起こす原因が、下肢静脈瘤である場合にはそちらの治も必要になります。
血管炎とは
皮膚にできた赤や紫の斑点、血管の色が目立つ症状 気になりませんか。
なかには、かゆみや熱感・冷感、ちくちくする症状なども併発している方もいらっしゃるかもしれません。
それらは、「血管炎」と呼ばれる血管の炎症によって引き起こされる病気かもしれません。
血管炎とは
血管炎は血管そのものに炎症が起こることで引き起こされる疾患のことをいいます。
原因は、自己免疫の異常によるものや、微生物への感染、薬剤によって引き起こされる場合もあります。
血管は頭の先から足の先まで張り巡らされているので、全身の様々な臓器に症状が出る可能性があります。
なかでも皮膚は発症頻度が高く、皮膚に発症する血管炎は「皮膚血管炎」と呼ばれ、好発部位は下腿です。
症状
全身に症状が起こる場合には、皮膚に赤い斑点が出現したり、網のように血管が広がって見えたりする皮膚症状のほかに、発熱、全身倦怠感、食欲不振、体重減少、筋肉・関節痛などの全身性の症状がみられます。肺、消化器、腎臓などの臓器に症状が出ることもあります。
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織から成り立っています。
皮膚生検をすることで、真皮にある血管で起こっている病変なのか、それより下層の脂肪組織との境界部で起きている病変なのか、静脈で起きているのか、動脈で起きているのかを鑑別することができます。
チーム医療
以上のように皮膚病変はうっ血のみではない原因で起こることがあり、広い視野で診断をつける必要があります。当クリニックは血管外科、形成外科、皮膚科の3領域にまたがる知識からお困りの症状に対して、「足のスペシャリストチーム医師陣」が協力してアプローチしています。
また、順天堂大学「足の疾患センター」(東京・文京区)への紹介も随時行っています。