下肢静脈瘤は、妊娠中に発生することがあります。妊娠中には、女性ホルモンの影響により静脈弁が軟らかくなることに加えて、胎児により中心の静脈が圧迫されるために、弁が壊れやすくなります。「逆流防止弁」が壊れると、血液の逆流が起こるため、逆流した血液は、足の下の部位に溜まります。その結果、静脈は血液を心臓へ運べなくなり、血液の流れが滞るので、血管は徐々に拡張してコブのように見える静脈瘤になることがあります
妊娠静脈瘤
妊娠
妊娠・出産
妊娠中や出産後に下肢静脈瘤ができる女性は少なくありません。
特に、1人目よりも2人目、3人目というように妊娠・出産の回数が増えるほど下肢静脈瘤になる割合が高くなっています。
妊娠と下肢静脈瘤には密接な関係があります。妊娠中に下肢静脈瘤が発生する原因は、主に以下の3つです。
- 子宮の圧迫
妊娠が進むにつれて体重が増え、子宮が大きくなり、下腹部や骨盤内の静脈を圧迫します。これにより、下半身から心臓に戻る血液の流れが滞り、血管内部の圧力がたかまり、逆流防止弁への負荷も増えて、機能不全が起こるなどが原因で静脈瘤ができやすくなります。
- 女性ホルモンの変化
妊娠中は、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの分泌量が増加します。これらのホルモンは、血管を拡張させる働きがあるため、静脈瘤の発生を促進します。
- 体の血液量の増加
妊娠中は、赤ちゃんや胎盤の成長に伴い、体の血液量が増加します。これにより、血管内は交通渋滞が起こり血管にかかる負担。内圧が大きくなり、静脈瘤ができやすくなります。
妊娠中の下肢静脈瘤は、妊娠3ヶ月までに約50%が発生するといわれています。症状としては、足のむくみや疲れ、かゆみ、こむら返りなどが挙げられます。また、静脈瘤が大きくなると、皮膚の色素沈着や潰瘍・スパイダーベインなどの症状が出ることもあります。
妊娠中の下肢静脈瘤は、ほとんどの場合、出産後に自然に消失します。ただし、妊娠回数が多いほど、「逆流防止弁がダメージを受けて壊れる」ことによって症状が残ってしまうリスクもあります。
妊娠中に下肢静脈瘤を予防するためには、以下のことに気をつけましょう。
- 長時間同じ姿勢で立ったり座ったりしない
- 足を高くして休む
- 医療用弾性ストッキングを着用する。下肢静脈瘤やむくみの程度によって着圧を変える必要があります。ドラッグストア製品では効果が低いと訴える患者さまが多く、病院専売品がおすすめです。受診時に当院医師に相談ください。
- 適度な運動をする
妊娠中に静脈の「逆流防止弁」が壊れるというのはどういうことですか?
産後ケアの健診で、静脈瘤の状態を把握しましょう
産後ケアの健診で、静脈瘤の状態を把握しましょう
妊娠中は、赤ちゃんを育てるために、血流量が増えます。その結果、下肢静脈の逆流防止弁がダメージを受け、血液の流れが悪くなることがあります。この状態が続くと、静脈瘤が悪化したり、むくみや痛みが出たりすることがあります。
当院では、産後ケアの健診として、静脈瘤の状態を調べる検査を行っています。この検査では、静脈の状態を詳しく調べることで、ご自身の体の状態を把握することができます。
これまでの常識では、妊婦さんは産後には出産前の身体に戻るのだから問題ないとされてきました。しかし、当院の患者さんでは、1人目の出産よりも、2回目の方が静脈瘤が悪化する傾向にあります。産後は我慢せずに、診断をお受けください。手術は次の出産までに受けたいという方が増えています。(注意:授乳期間中は手術を受けることはできません。治療までのスケジュールは医師と相談の上お決めください。産後の下肢静脈瘤治療は保険適応です)
当院の産後ケアの健診は、静脈瘤の状態を把握し、早期に治療や対策を講じるために役立ちます。妊婦さんの生活の質・QOLを高める上でも、産後の健診をおすすめします。
無料健診
「妊娠中に静脈瘤が悪化した」、「強いむくみがあった」、「スパイダーベインが発症した」
出産後6カ月以降の方を対象に「無料健診」を行います。
LINEからお問合せください。完全予約制となります。
クスリ(薬物療法)に頼らずに「非薬物療法としての弾性ストッキング」
弾性ストッキングは、下肢静脈瘤(静脈の拡張や弁の不全による血液の逆流が引き起こす血管の異常)の治療や症状の緩和に用いられる非薬物療法の一つです。クスリ(薬物療法)に頼らずに、症状の管理や改善を目指す方法として利用されます。