エコノミークラス症候群
足の血栓症とは(エコノミークラス症候群)
足から心臓へと血液を戻す血管(静脈)に血の塊(血栓)ができて詰まってしまう病気です。
ふくらはぎや足の表面にある静脈に血の塊ができても大きな問題とはなりにくいのですが、下腹部や太もも、膝の中心を走る深部静脈に血の塊ができた場合、重症となってしまいます。血の塊が足の静脈から心臓や肺に向かって流され、肺の血管に詰まった場合、肺塞栓症を引き起こします。
<初期症状>
片方の足全体やふくらはぎが急に赤黒く腫れあがり、痛みがあらわれます。
数日をかけてゆっくりと進行することもあります。放置した場合、腫れがつづいて皮膚が茶色く変色するケースもあります。
肺塞栓症になると、呼吸が苦しくなり、胸が痛くなって、最悪の場合は生命を落としてしまいます。
最近、手術を受けた方、ガンにかかっている方、これまでにも深部静脈血栓症を起こしたことのある方、寝たきりの方、ピルなどの避妊薬などを飲んでいる方などは、深部静脈血栓症になりやすいことが知られていますが、はっきりした原因が分からないことも少なくありません。
東日本大震災や熊本地震の避難所や車中泊で多くの人が発症したことも報告されています。
当院では足の腫れがひどく、深部静脈血栓症の疑いの強い方に対してはDダイマー検査と超音波(エコー)検査を行い、血栓が発見された場合は血液をサラサラにする薬を処方しています。重症化または緊急性の高いと判断される場合は大学病院等の医療連携施設への紹介も行っています。
最近では旅行で来日された外国人やピルを服用し、足に違和感を覚える方からの問合せが増え、さらには婦人科クリニックからの紹介も急増しています。
旅行後に足に違和感があり、痛みや腫れがある場合は出来るだけ早くに近隣の循環器内科を受診することをおすすめします。
エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)と弾性ストッキング
旧日本陸軍の兵隊さんは長時間の行軍に際、あしにゲートル(脚絆)を巻いていました。
ゲートルを巻くことにより、足に血液が滞るのを防ぎ、疲れを軽減していたのです。
現在では「兵隊さんのゲートルが包帯へと進化し、医療機関では伸縮性の高い包帯の代わりに、さまざまな医療用弾性ストッキングが医療機器として有効利用されています。」
エコノミークラス症候群の予防には医療用弾性ストッキングが有効です。現在、医療機関では手術後の血栓予防管理が保険適応となったことを契機として、3日程度の20mmHg程度の圧迫療法がおこなわれるようになりました。ご家庭でも血栓症に対するハイリスクな患者さんは日常的に弾性ストッキングの着用をおすすめいたします。
医療用弾性ストッキングは「下肢静脈瘤の治療の補助器具」として広く医療現場で使われていますが、現在は30mmHg以上の中圧の製品は保険適用(療養費対象)となっています。(リンパ浮腫・慢性静脈不全による難治性潰瘍に限る)
平成20年度診療報酬改定により、医師の指示に基づき購入する弾性着衣(スリーブ・ストッキングなど)が年に2回計4セットまで(1回の購入時2セットまで)を療養費として申請することが認められるようになっています。
深部静脈というより深いところにある静脈に血栓ができると、「深部静脈血栓症」という病気になります。
この病気は、足が急に腫れて痛みが出る症状で見つかることが多いのですが、血栓の場所によっては無症状の場合もあります。血栓のある場所によっては、命にかかわる可能性がある病気です。エコノミークラス症候群とも呼ばれています。
静脈血栓はふくらはぎの静脈に最初はできることが多いようですが、膝裏の深部静脈に血栓ができたり、太ももの付け根に血栓ができることもあります。この場合は肺などへ飛んでいく可能性が高くなってくるので、急に足が腫れて赤くなったりする場合は緊急的に検査や治療が必要となります。
神戸の震災後、10年たった女性に多く発症したという報告もあります。足に異常を感じたら検査をお薦めします。
東日本大震災で当院スタッフが避難所で配布した資料
血栓症と低用量ピル
低用量ピルには、エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが含まれています。これらのホルモンは、卵巣からの排卵を抑制することで避妊効果を発揮します。また、子宮内膜の成長を抑制することにより、月経痛や月経不順などの症状の改善にも役立ちます。
一方で、これらのホルモンは、血液凝固因子の産生を促進する作用があります。これにより、血液が凝固しやすくなり、血栓症のリスクが増加するとされています。
具体的には、低用量ピルを使用する女性の場合、1年間に1000人中1〜5人程度が血栓症を発症する可能性があります。ただし、このリスクは非常にまれなものであり、多くの場合は軽度の症状で済みますが、ネット上では入院治療を要したケース、患者さまの体験談も多数報告されています
血栓症の症状としては、以下のようなものがあります。
・腕や脚の痛みや腫れ ・呼吸困難 ・胸痛や不快感 ・めまいや失神 ・言語障害や麻痺などの症状
これらの症状がある場合には、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの可能性があります。早期に医師の診察を受け、適切な治療を受けることが重要です。
また、低用量ピルを使用する場合には、以下のようなリスクファクターがある場合には、血栓症のリスクが高くなることが知られています。
・過去に血栓症を発症したことがある ・遺伝的な血液凝固異常がある ・喫煙している ・肥満である ・高血圧である ・高コレステロール血症である
これらのリスクファクターがある場合には、低用量ピルの使用には注意が必要です。医師と相談し、リスクとメリットを比較して、適切に
判断する必要があります。医師は、個々の患者の状態に応じて、最適な避妊方法を提案することができます。
低用量ピルを使用する場合には、以下のような予防策を講じることも重要です。
・喫煙を避ける ・適度な運動をする ・食生活に注意し、肥満を防ぐ ・医師の指示に従い、定期的に健康診断を受ける
また、低用量ピルには、以下のような副作用も知られています。
・吐き気や下痢などの胃腸の不調 ・乳房の痛みや張り ・頭痛やめまい ・月経不順や出血量の増加など
これらの症状がある場合には、医師と相談し、適切な対処法を検討する必要があります。
低用量ピルは、避妊効果が高く、副作用が少ないというメリットがありますが、血栓症のリスクがあることには注意が必要です。医師と相談し、自分に最適な避妊方法を選択することが大切です。
低用量ピルは、避妊効果が高く、副作用が少ないというメリットがありますが、以下のような問題点があります。
- 血栓症のリスクがあること 低用量ピルには、血液凝固因子の産生を促進する作用があり、血栓症のリスクが増加することが知られています。具体的には、低用量ピルを使用する女性の場合、1年間に1000人中1〜5人程度が血栓症を発症する可能性があります。
- 副作用があること 低用量ピルには、吐き気や下痢などの胃腸の不調、乳房の痛みや張り、頭痛やめまい、月経不順や出血量の増加などの副作用があります。
- 飲み忘れが起こりやすいこと 低用量ピルは、毎日同じ時間に服用することが大切です。しかし、忙しい生活や変則的な生活リズムのために、飲み忘れが起こりやすいことがあります。
- STDを予防できないこと 低用量ピルは、妊娠を予防するための避妊方法であり、性感染症を予防する効果はありません。性感染症を予防するためには、避妊具を併用する必要があります。
- 医師の処方が必要であること 低用量ピルは、医師の処方が必要なため、自己判断で使用することはできません。医師と相談し、自分に最適な避妊方法を選択することが大切です。
10月13日は世界血栓症デー
世界では4人に1人が血管の病気で亡くなっています。
国内・国外関連学会およびニュースソース
肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
世界中の人々が、血栓症によって引き起こされる病状で亡くなっています。驚くべき事実として、アメリカだけでも年間約90万人が血栓によって影響を受け、そのうち約10万人が亡くなっています。この死亡者数は、エイズ、乳がん、交通事故による死者の合計数を上回ります。
日本血栓止血学会より警鐘が出されています。
参考文献
静脈血栓塞栓症に対する各種理学的予防法の静脈血流増加効果についての検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/phlebol/15/2/15_89/_pdf
「肺血栓塞栓症」は急性の場合、14%(約7人に1人)が死亡すると言われています。
また、重症の場合、突然死が多く、救命が難しい場合があります。そのため、肺血栓塞栓症の原因となる深部静脈血栓症の予防と治療が大切です。(血栓症NETより)