うっ滞から起こる皮膚疾患
うっ滞から起こる・むくみ・皮膚疾患 黒ずむ かゆい なかなか治らない
当院が日経ヘルスの取材を受けました。詳しく解説しています。2022年1月 コロナ架でデスクワークが増え、症状を訴える方が急増しています(榊原医師が解説)
クロワッサン Vol.29 むくみを放っておいたら、「足が黒ずんできました。」【40歳からのからだ塾WEB版】(榊原医師取材受)
かゆみ・皮膚のカサカサの原因は「血液のうっ滞かもしれません」
うっ滞性皮膚炎は下肢静脈瘤などの足の静脈の流れが悪くなった状態を放置し、慢性化したことによっておこる皮膚のトラブルが原因です。
何らかの理由によって静脈の流れが滞ると、老廃物を多く含んだ血液が足にとどまり続け、むくみ、かゆみ、湿疹、色素沈着の症状がみられるようになります。これがさらに進行すると皮膚が硬く(硬化)なっていき、潰瘍ができやすくなるのです。これらを「うっ滞性皮膚炎」と呼んでいます。
うっ滞性皮膚炎は、比較的中高年の女性に多くみられる特徴があります。夕方になって靴下のあとが目立つようになってきた、足がパンパンにむくんできたら、要注意です
当院では血管の専門医と形成外科専門医4名が診察にあたり、これ以上に重症化しないようにアドバイスを行います。
皮膚科に行ってもなかな治らない。「かゆみや黒ずみがある方」は一度当院へご相談ください。LINEでの写真送付も可能です。オンライン診療も開始しました。
今、あなたはこんな状態でお困りではありませんか?
血液のうっ滞は慢性化する むずむず感じる 皮膚がくろずむ なかなか治らない
うっ滞がおこる
長時間立ち仕事に従事している人や加齢、肥満、妊娠、出産などの理由で血液に流れが悪くなると、足の特にひざから下の部分に血液がうっ滞しやすくなります。
むくみを放置すると慢性化していきます
血液がうっ滞する根本原因を取り退かないままにしておくと、うっ滞は慢性化していきます。妊娠・出産による静脈の機能不全(うっ滞)は産後に自然解消することがありますが、徐々に悪化するケースもあります。他の要因で血液の逆流が起こり静脈の弁がダメージを受けて損傷する場合では静脈瘤自体は自然に治癒することはありません。
色素沈着
静脈のうっ滞が続くと皮膚表面の毛細血管もうっ血します。すると真皮層にある毛細血管は拡張し皮膚を透けて目立ってきます。赤い血管や青い血管が目立ち始めたら身体からの何かのサインとの報告もあります。
最近ではTV等で話題の「毛細血管のゴースト化にも影響を及ぼすと考えられています。」ここでは血管が衰え始める年齢は45歳からという学説もあります。
そもそも静脈は身体内の各箇所から老廃物を集める役割を持っています。つまり静脈を流れている血液は老廃物が多く含まれているということで、これがうっ滞し続けると、足は酸素不足にもなり「足が疲れる」「足がつる」などの症状も日常化してまいります。
脂肪皮膚硬化症
「むくみを放置し、かゆみが出る・乾燥など」→ 脂肪皮膚硬化症へ進行 この場合はさらに悪化しないように、必ず受診が必要なレベルとなります。自分の病気がどの段階(グレード)にあるか、医師に診断してもらってください。
血液循環が悪い状態が続くと、皮膚の角化細胞はダメージを受け続けます。結果としてカサカサになりやすく、バリア機能が失われ、外部からの刺激や影響を受けやすくなります。これはつまり外からの刺激で湿疹やかゆみを感じやすくなることで、ちょっとしたことでもかゆみを感じるようになります。そして、これを掻きむしったりしていると、出血したり、皮膚表面も硬化して状況が悪くなっていることも合わせて、傷が治りにくくなっていきます。
潰瘍に至る場合もある
このような状態をを放置していると、傷口が広がって潰瘍になることもあります。こうなると触っただけでも痛んだりして日常生活にも支障をきたします。足の感染症にもかかりやすくなりますので、このようなことになる前に適切な検査・治療を受けることを推奨します。
うっ滞性皮膚炎は、脚の膝より下の部分に血液と体液がたまることで炎症が起きる病気です。
下腿(脚の膝より下の部分)に静脈瘤(拡張して蛇行した静脈)とむくみ(浮腫)があり、その後に慢性静脈不全症を発症した人でよくみられます。慢性静脈不全症とは、脚の静脈が損傷することで、血液の正常な流れが妨げられる病態で、これによりうっ滞性皮膚炎が引き起こされます。うっ滞性皮膚炎は、通常は足首に生じますが、膝に向かって上に広がることもあります。
症状
まず、皮膚が赤くなり、軽度の鱗屑(うろこ状のくず)が生じます。数週間から数カ月で、皮膚が暗褐色に変色します。やがてその部分の皮膚が破れ、びらん(潰瘍)ができます。これは一般的には足首の近くに生じます。潰瘍に細菌感染が起こることもあります。うっ滞性皮膚炎では脚がかゆくなって腫れますが、痛みはありません。潰瘍が生じると通常痛みを伴います。
皮膚が硬く、厚くなって、痛みや圧痛を生じる場合もあります。このような合併症は「硬化性脂肪織炎」とも呼ばれます。
診断
治療
慢性静脈不全症の治療
長期的治療では、足首の周囲の静脈に血液がたまるのを防ぐことで、慢性静脈不全症の治療を行うことを目的とします。座る場合は、脚を心臓より高く上げた姿勢をとるようにします。医師が処方する適切な強さの弾性ストッキング(圧迫ストッキング)を着用することでも、血液がたまるのを防いでむくみを軽減することができます。ただし、ドラッグストアなどで販売されている「サポートタイプ」は30mmHg以下のものが主体で、病院専売品とは大きく異なり治療用としては不十分です。潰瘍治療やリンパ浮腫治療の場合、弾性ストッキングが保険適応となりますが、医師の処方が必要となり、さらに30mmHg以上の製品のみが保険適応対象となります。
・慢性静脈不全による難治性潰瘍治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給について
https://www.mhlw.go.jp/…/iryo…/iryouhoken13/dl/200327_04.pdf
・慢性静脈不全による難治性潰瘍治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について
https://www.mhlw.go.jp/…/iryo…/iryouhoken13/dl/200327_05.pdf
皮膚炎の治療
皮膚炎の症状が現れ始めたばかりであれば、水道水や酢酸アルミニウム(ブロー液)に浸したガーゼパッドなどの鎮痛作用のある湿布をすると、皮膚が心地良く感じられることがあり、清潔な状態に保たれることで感染予防にも役立ちます。病状が悪化し、患部が熱をもって赤くなり、小さい潰瘍や膿が生じる場合は、より吸収力のあるドレッシング材を使用します。
コルチコステロイドのクリームや軟膏も有用であり、しばしばペースト状の酸化亜鉛と混ぜて、皮膚に薄く塗ります。コルチコステロイドは、治癒を妨げるため、潰瘍部には直接塗らないようにします。
潰瘍の治療
潰瘍が大きかったり、広範囲にわたっている場合は、水分を多く含むハイドロコロイドドレッシング材やハイドロゲルドレッシング材が使われます。抗菌薬は、皮膚がすでに感染を起こしている場合以外は使用しません。潰瘍が非常に大きい場合は、体の他の部分から皮膚を移植することもあります。
ウンナブーツと呼ばれる、亜鉛入りのペースト状ゼラチンを含んだ伸縮性のある包帯を使用しなければならない場合もあります。この包帯を脚の膝より下の部分と足首に巻くと、その部分は固定されますが、ギプスほど硬くはなりません。このブーツ状包帯は、むくみが広がるのを抑えて皮膚を刺激から守り、また包帯に含まれたペーストが皮膚の治癒を助けます。最初のうちは、この包帯を2~3日毎に交換しますが、しばらく経てば1週間巻いたままにしておきます。潰瘍が治った後は、朝、起きる前に弾性ストッキングを履くようにします。どのようなドレッシング材を使用するとしても、治癒させるためには、むくみを(通常は圧迫によって)抑えることが不可欠です。
血管の仕組み
●血管の仕組みとはたらき
体の血管には、動脈と静脈があります。 動脈は、心臓から送り出された血液を全身に運びます。動脈の血液には、細胞や組織の活動に必要な酸素や栄養分が含まれ、心臓のポンプ作用で全身に送られます。そして、毛細血管を通じて、酸素や栄養分が届けられるのです。
静脈は、細胞や組織が活動したあとの老廃物や二酸化炭素を再吸収します。吸収するのはやはり毛細血管で、次第に太い静脈となって心臓にもどります。
足の静脈には逆流防止弁という血液が重力に落ちないようにするストッパーが備わっています。ところが妊娠中に静脈がのびっぱなしになってしまうと、このㇵの字の形をした逆流防止弁も引き伸ばされてしまうので、きちんと閉じなくなってしまいます。その結果、足の静脈を流れる血液は重力に負けてしまうので、血液は心臓に向かって流れることができません。
当院で検査をお受けください。
榊原ドクターの「むくみからのメーッセージ」連載 足がむくんで、だるいんです。【40歳からのからだ塾WEB版】
足の血管
●足の血管について(動脈・静脈)
足の動脈を流れる血液は、心臓のポンプ作用と重力によって下のほうへ無理なく流れます。ところが、足の静脈は、その反対に、下から上へと流れていかなければなりません。
上方向への流れということは、地球の重力に逆らうことです。したがって、足の静脈の血管は、動脈にはない特別な構造を備えています。それは、一定間隔に、カタカナの「ハ」の形をした弁(逆流防止弁)がついています。そして、この弁は、血液が下から上へと流れるときだけ、開くようになっています。
●足の血管と病気の関連性
足の血管の病気には、動脈の病気と静脈の病気に分けられます。足の動脈の病気には、閉塞性動脈硬化症(ASO)というものがあります。
血管の動脈硬化により、血管が狭くなったり、血管が詰まることが原因です。一方、静脈の病気には、深部静脈静脈血栓症(DVT)や下肢静脈瘤・血栓性静脈炎があります。深部静脈血栓症は、深部静脈(大腿静脈・膝窩静脈など、体の深部にある静脈)に血栓が出来る病気で、肺血栓塞栓症の主な原因です。
静脈の循環「ふくらはぎ」が第2の心臓
静脈の循環に深くかかわっているのが、静脈内の「弁」と、ふくらはぎ(下腿)の「筋肉」です。
静脈には、筋肉の外側に位置し、体の表面近くにある「表在(ひょうざい)静脈」と、体の表面より深く、筋肉に囲まれた「深部静脈」があり、両方は「交通枝(し)」と呼ばれる静脈でつながっています
慢性静脈不全(CVI)皮膚がカサカサに かゆみ・湿疹
慢性静脈不全により足の静脈がうっ血すると、皮膚を走る毛細血管にもうっ血が生じ、血管が拡張します。(下図イラスト)皮膚科では毛細血管拡張症 telangiectasiaと呼びます。
老廃物だらけの血液が足に溜まっているため、足の皮膚は血液循環が悪くなります。
皮膚の角化細胞がダメージを受け、皮膚がカサカサになり、外敵から身を守るための皮膚のバリア機能が壊されるので外からの刺激に対して湿疹・かゆみを生じやすくなります。また、かゆみに対する皮膚のかきこわしや、ケガなどの傷がなかなか治らず、時には傷口が広がって潰瘍になることもあります。
加齢による静脈還流障害・うっ滞
スパイダーベインの病態
うっ滞によって色々なタイプの血管が皮膚表面に出現(毛細血管拡張症)
◎なかなか治らない皮膚症状(榊原先生コラムより)
下肢静脈瘤は血管が膨らんだり、足がむくれたりするだけの病気ではありません。実は血流の渋滞である「うっ血」が体をむしばみ始めています。これを最近では慢性静脈不全と呼んでいます。
内側のくるぶしの上辺りの皮膚がむずむずとかゆくなり、湿疹のようなものができたり、焦げ茶色の色素が増えてきたりしている方はいませんか。
こうした皮膚症状は次第に増えていき、膝下全周に及ぶことがあります。まるで茶色のハイソックスを履いたような感じになります。これらは慢性静脈不全の皮膚症状で、うっ滞性症候群とも呼ばれています。
その原因は、下肢静脈の高血圧にあります。静脈の血圧は簡単に測ることができないので、あまり知られていません。
一般に静脈圧は心臓の高さを基点(ゼロ)とします。正常な方が立っている姿勢では、足のくるぶし辺りで80~100ミリHgの静脈圧がかかっています。
ですから、足の甲の血管が浮いているわけです。逆に寝そべって足を高く上げると心臓が低くなるため、ゼロからマイナスになり足の血管は縮んで見えなくなります。
立った状態から歩き始めると足の筋ポンプ作用が下肢静脈に働き、速やかに血液が心臓へ戻り始めて30ミリHgまで下がります。つまり、立っていた時の血のよどみが解消されたわけです。
しかし、下肢静脈瘤のような静脈弁不全があると、運動をしても静脈圧は60ミリHgくらいにしか下がらず、常に足全体が高い静脈圧にさらされてしまいます。
静脈圧が高くなると毛細血管の流れが悪くなり、組織に血液がよどみます。これにより、皮膚の新陳代謝が落ちてしまい、老廃物が蓄積して慢性炎症のような変化が出てきます。
そして、その炎症が皮膚細胞を刺激して色素沈着を起こすのです。紫外線を浴びると、日焼けするのと似ています。
さらに静脈圧が上がってくると、皮膚や脂肪組織が委縮して固くなる脂肪皮膚硬化症が起こり、引き返すことができなくなります。
その行きつく先は皮膚がただれてくずれる皮膚潰瘍なのです。
長年にわたり治療してきたにも関わらず皮膚症状が改善しない場合には、このような血流障害が原因であることがあります。一度、近くの医療機関で下肢静脈血流の検査を受けることをお勧めします。
血液の「うっ滞によるむくみを軽減させる弾性ストッキング」有効です
当院では慢性静脈不全に対しては保存的治療として「医療用弾性ストッキング」を処方しています。
軽度の方であれば18mmHg-20mmHgの弱圧タイプ
皮膚に症状が出ている方(乾燥や色素沈着)下肢静脈瘤と診断された方には32mmHgの中圧タイプが「病気の進行予防」にもおすすめです
皮膚科に潰瘍がある方には40mmHg以上が処方されます。(保険適応)